災害時や不安時における色彩の心理的サポートと日本の事例

災害時や不安時における色彩の心理的サポートと日本の事例

色彩と心の安定:日本文化における色の意味

災害や不安な状況下で、人々は自分自身や周囲の心を落ち着かせるために、さまざまな方法を探します。その中でも、「色彩」は、私たち日本人にとって特別な意味を持つ存在です。古くから日本では、四季折々の自然や伝統行事、衣服や建築など、生活のあらゆる場面で色が大切にされてきました。

例えば、青は「清らかさ」や「安心」を象徴し、災害時にも冷静さをもたらす色とされています。また、緑は「癒し」や「希望」を感じさせ、不安な心にそっと寄り添います。逆に赤は「活力」や「生命力」を表し、新たな一歩を踏み出す勇気を与えてくれます。

このように、日本人は日常の中で色彩に込められた意味や感情を自然と受け取り、心の支えとして活用してきました。特に災害時や不安な場面では、身近なものの色合いが私たちの心にそっと寄り添い、安心感や希望をもたらす心理的サポートとなります。

2. 災害時に役立つ色彩の使い方

災害発生時や避難所での生活は、心身ともに大きなストレスを伴います。こうした環境下では、色彩がもたらす心理的な効果を活用することで、不安や緊張を和らげ、安心感や落ち着きを提供することができます。ここでは、日本国内の避難所で実際に取り入れられている色彩の工夫と、その事例についてご紹介します。

避難所で使われる布製品の色彩例

アイテム 使用される主な色 心理的効果
毛布・マット ベージュ、ライトブルー、グリーン 安心感、リラックス効果
カーテン・間仕切り 淡いピンク、クリーム色 温かみ、親しみやすさ

掲示物や案内表示の色使い

避難所内では、情報伝達のための掲示物やサインにも色彩が活用されています。例えば、重要なお知らせには赤やオレンジなど目立つ色が使われ、安全な場所やトイレなどへの案内には青や緑など落ち着いた色が選ばれる傾向があります。これにより、混乱を防ぎ、必要な情報をわかりやすく伝えることができます。

照明の工夫による心のケア

また、照明の色温度にも配慮が見られます。白色光だけでなく、暖かみのある電球色(オレンジ系)を一部に採用することで、夜間でも落ち着いた雰囲気を作り出し、不安感を和らげる効果があります。

日本各地での実践例

例えば、2016年熊本地震後の避難所では、「優しい色合い」の毛布やカーテンが導入され、多くの被災者から「安心できる」「気持ちが落ち着く」と好評でした。また、新潟県中越地震時には、小学校体育館を避難所として使用する際に、淡いグリーン系統のマットやパーテーションを設置し、子どもたちや高齢者にも好意的に受け入れられています。

伝統的な日本の色とその効用

3. 伝統的な日本の色とその効用

日本には、古くから人々の暮らしに寄り添ってきた「伝統色」が数多く存在します。災害時や不安な状況においても、これらの色彩は心理的な安心感や希望をもたらしてきました。

青(藍色・空色)の持つ静けさ

藍色や空色などの青系統は、日本の自然や生活文化と深い関わりがあります。落ち着いた青は心を鎮め、混乱した気持ちを穏やかに整える働きがあるとされています。避難所や公共スペースでも、青色がアクセントとして使われることがあり、不安な時にそっと心を支えてくれる役割を果たします。

桜色が与える優しさと再生への願い

春になると街を彩る桜の花。その淡いピンク「桜色」は、日本人にとって特別な思い入れがあります。災害後にも咲く桜は「また始まる」という再生や希望の象徴です。桜色は見る人の心を和ませ、「大丈夫」という温かなメッセージを伝えてくれる存在です。

若草色が呼び起こす生命力

芽吹きの季節を思わせる若草色は、新しい命や前向きなエネルギーを感じさせます。不安な状況でも、若草色を見ることで「これからまた歩き出せる」という前向きな気持ちになれると言われています。日本各地で復興支援のシンボルカラーとして若草色が用いられることもあります。

日常に息づく伝統色の力

これらの伝統的な日本の色彩は、身近な風景や衣服、小物などにも取り入れられています。災害時や心細いときほど、こうした色がもたらす穏やかな力が、人々にそっと寄り添っているのです。

4. 行政や自治体による色彩配慮の取り組み

日本では、災害時や不安な状況下において、行政や自治体が色彩を活用した心理的サポートの取り組みを進めています。特に避難所や学校など公共の場での事例が増えており、色彩による心のケアが注目されています。

自治体の実践例

いくつかの自治体では、避難所の壁面や案内板に安心感を与えるパステルカラーを採用しています。たとえば、宮城県石巻市では、2011年の東日本大震災後、仮設住宅の外壁に優しいグリーンやブルーを使い、不安を軽減する効果が見られました。また、大阪府枚方市では、避難所内に落ち着きや安心感をもたらすため、カーテンや仕切りに暖色系カラーを取り入れる工夫がなされています。

学校での色彩ケア導入事例

学校現場でも色彩によるメンタルケアが実践されています。熊本県内のある小学校では、地震後の仮設校舎で教室ごとに異なる明るいカラーリングを施し、子どもたちが自分のクラスに愛着を持てるよう配慮しました。さらに保健室にはリラックスできるグリーン系を選び、不安感やストレス緩和につなげています。

主な色彩配慮事例一覧

場所 使用された色彩 目的・効果
石巻市 仮設住宅 グリーン、ブルー 安心感、不安軽減
枚方市 避難所 暖色系(オレンジ等) 落ち着き、安心感
熊本県 小学校 明るい多色使い 愛着形成、前向きな気持ち
まとめ

このように、日本各地の行政や自治体、教育現場では「色彩」の力を活用し、被災者や児童生徒への心理的サポートを行っています。今後も地域特性やニーズに応じた色彩配慮が広がっていくことが期待されています。

5. 色彩心理学の視点からのアドバイス

誰でも実践できる色彩選びのポイント

災害時や不安な状況下で、色彩が心に与える影響はとても大きいものです。難しい知識がなくても、日常生活や非常時に取り入れやすい色彩の工夫についてご紹介します。

安心感をもたらす色の活用

淡いブルーやグリーンは、日本人にとって「安心」「癒し」のイメージがあります。例えば、避難所などで自分のスペースにブルーやグリーンのタオルやハンカチを置くことで、周囲の緊張感を和らげる効果が期待できます。

活力や希望を感じさせる色使い

明るいイエローやオレンジは、「元気」「前向き」といった印象を与えます。停電時に持ち歩く懐中電灯のカバーや、携帯用ブランケットなどに暖色系を選ぶことで、気持ちを明るく保つ手助けになります。

日本文化と調和する色選び

和の色彩には「桜色」や「若草色」など、季節感や自然との調和を感じさせるものが多くあります。自宅で防災バッグを準備する際、身近な和色アイテム(風呂敷・手拭い等)を加えることで、不安な時にもほっと落ち着ける空間を演出できます。

日々の暮らしで取り入れる小さな工夫

普段からお気に入りの色をインテリアや持ち物に取り入れておくと、万が一の時にも心強い味方となります。家族で話し合って、みんなが安心できる色彩アイテムを選ぶこともおすすめです。

6. 色彩を活かした支援活動の事例

日本各地では、災害時や不安な状況において、色彩が持つ心理的効果を積極的に取り入れたボランティアやNPOの支援活動が展開されています。以下に、実際の事例をいくつかご紹介します。

被災地の仮設住宅での「カラーワークショップ」

東日本大震災後、宮城県や福島県などの仮設住宅では、NPO団体が中心となり「カラーワークショップ」を実施しました。被災者自身が好きな色の布や折り紙を使って室内を飾ることで、無機質な空間が温かみのある場所へと変わり、不安やストレスの軽減につながりました。

子どもたちへの「色彩アートセラピー」

熊本地震後には、子どもたちの心のケアを目的とした「色彩アートセラピー」が行われました。色鉛筆やクレヨンで自由に絵を描くプログラムは、言葉にしづらい感情を表現する手助けとなり、安心感や前向きな気持ちを育む一助となっています。

避難所での「カラーコーディネート空間」

北海道胆振東部地震の際には、避難所内で色彩心理士による「カラーコーディネート空間」の設置が行われました。青や緑などリラックス効果が高い色調を使ったパーテーションやカーテンを配置することで、プライバシー確保とともに心身の安定につなげています。

地域社会との連携による持続的な取り組み

これらの活動は単発的なものではなく、地域住民・行政・専門家が連携しながら継続的に実施されている点も特徴です。日本ならではの「和」の美意識や四季折々の自然色も取り入れながら、人々の心に寄り添う支援が広がっています。

まとめ

日本各地で展開されている色彩を活かした支援活動は、人々の安心と希望を生み出す大切な役割を果たしています。今後もさまざまな現場で、色彩による心のサポートが広がっていくことが期待されます。